ポーランド日記

ワルシャワに来ました。

11月29日

できれば信じたくないけれど、今週は寒い。

 

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まだ秋だと言われて、余計に絶望が濃くなる。数か月前にさる人が、去年は-30℃までいった、濡れタオルを振り回して凍てついた凶器を作ってみるべきだったな、あははははは、なんていう話をするのを、遠い昔話を聞くような心持でのん気に拝聴していたのが懐かしい。授業で学生に、「消したいもの」をたずねたら「冬」だと言った。まだ冬は来ていない。これは秋だと言う。私の絶望はさらに濃くなる。

知らないから想像もできない乏しい頭で、零下の世界を考える。家の中は暖かい。私の頭は余計に働かない。日本では雪の降る朝、布団から出たくない寒さで目覚めて、雪や霜を知るけれど、こちらでは家が暖かいから外に出ない限りわからない。ただ辺りの薄暗さで気づく。雪が降っていると。先週雪が降った。少し積もった。

 今日も予報通り雪とみぞれ。

 

昨日、日本にいる知り合いから連絡があった。

スイスって近いの。ロレックス買いたいんだけど。日本よりそっちのほうが安いんじゃないかと思って。どうかな。確かに日本に比べればここはかなりスイスに近いと言えるかもしれないが、それでも飛行機で直接行ってチューリッヒまで2時間かかる。2時間しかかからない。私は、ロレックスという「高い時計」が存在することを概念としては知っているけれど、実際に買おうと思ったことも店舗を覗いたこともないので、恥ずかしながらその時計が「どのくらい」高いものなのかまるっきり知らなかった。その知り合いは私が欧州にいるので、スイスのブランドだからスイスに少しでも近い場所で購入すれば値段も少しは安くなるんじゃないかと思って連絡したようだけど、わからない。インターネットで直営のホームページに行って、とりあえずいちばん上に表示された商品をクリックして値段を見てみたけど、£25,550だった。日本円で380万円だった。だいたい、いい感じの乗用車を買って、お釣りがくるくらいか。そんな時計が存在するのか。もともと金持ちではなく、いまも貧乏なので、そういう時計を買いたいという気持ちが存在することはわかるけど、実際に身近に出会ってみると不思議なものだった。10万円もあればアイフォンが買えて、使いこなせもしない多種多様な機能がついていて、実にいろいろなことができる。普通乗用車に匹敵する値段のその時計は、(たぶん)時間を確認することしかできないけれど、いったいどういう仕組みでその価格になるのだろうという、無知からくる素朴な疑問が浮かぶ。街で車を見るたびに、自動車を腕にぶら下げるお金持ちの人を想像する。私がこの時計の値段を知ってはじめに思ったのは「なんて危ない時計なんだろう」ということだった。こんなものを海外で購入したら、安全に家になんて帰れる気がしない。途中で強盗に遭うか、国によってはすぐに殺されてしまうな、なんてぼんやり考えた。