ポーランド日記

ワルシャワに来ました。

一時帰国

1週間だけ、一時帰国していました。

 

たった1年の渡航の中で「一時帰国」なんていうのは、格好つけた感じで憚られるけれど、とりあえず日本に帰っていた。日本に行って、友人に会ったりお酒を飲んだりお酒を飲んだり、遊んだりしていた。大学生かよというくらい遊んでいた気がする。すでに9月初旬で寒かったポーランドからすると、30℃の日本では、なんだか夏に戻ってきた!これぞ夏休み!!という感慨。外国から日本に来るのはいつも楽しい。慣れていた当たり前の空間がなんだか余所余所しく、新しく見える。電車内の広告がすべて読めるだけでうきうきする。

日本ではいろんな匂いがした。私の家が田舎だからだろうか、とにかくいろんな匂いがする。草木の匂いとか、蚊取り線香だとか野焼きだとかよその家の夕飯の匂いとか、いろいろ。それ以外にも何だろな、飲食店でも何でも、日本では、匂いがあらゆるところからだだ洩れなのだ。パン屋でもコンビニでも、本屋でも洋服店でも、その店独特の匂いがする。匂いを嗅いだだけで今どこにいるのかわかりそうな気がするくらい場所が変わると匂いが変わる。なんで私はこんなに鼻が利くのだろう!と思ったけど、きっと慣れてしまえばなんでもないことなのだろう。ポーランドではこれほど匂いを嗅いでいただろうかと不思議に思う。今まで意識しなかったけど、ポーランドはどんな匂いがするだろう。

日本に戻って、成田エクスプレスに乗ってスイカを使って乗り換えをして、なんてしていると、まったく普通で、今まで自分がどこで何をしていたのか分からなくなってきた。最寄りの駅に近づくにつれて、見慣れた景色の中に自分が入っていくにつれて、私は昨日も一昨日も、先週も先月も、ずっとこの中に居たのではないかと錯覚しそうなくらいに「普通」だった。ポーランドで生活していたなんて本当は夢で、あなたはずっと日本で生活していたんですよ、と言われても納得してしまいそうなくらいすんなり日本に馴染んでいる自分に驚く。まぁ、20年以上住んでいたんだし、当たり前といえばそうなのだけど。

1週間で日本に馴染んで自宅でごろごろしてからポーランドに戻って思ったのも、不思議なことにこれもまた「普通」だった。たった6か月だけど、見慣れた景色があって、自分の部屋があって、慣れた生活リズムがある。月並みだけどすごく不思議で、たった数か月なのにそれは私の「日常」になっていて全部が普通なのだ。全然違うのに、普通。トラム(路面電車)に乗るのも、目にする人々がアジア人じゃないのも、聞こえてくるアナウンスやおしゃべりがポーランド語なのも、私にとっては普通になっている。日本だって「普通」なのに。私の中に二つのチャンネルみたいなのができていて、それが切り替わっているだけにすぎない、みたいに。多言語を話せる人は、脳内で同じようなことが起きているのかもしれない。欧州には多言語話者が本当にたくさんいて、二つ目の英語ですら四苦八苦している自分はふがいないと思う。そう、「普通」が二つある。あんまりにも二つが同様に同時に普通で、こんな感覚もあるんだなぁと戸惑う。ぼーっとしながらトラムに乗る。路線バスで慣れたスーパーや学校へ行く。そしてまた、仕事をする。そうだ私は働いているのであった。